TDPによる温度の考え方

TDPの考え方と熱対策や冷える理論や殻割の必要性 を考える

TDP =熱設計電力
Tcase =プロセッサーの内蔵ヒート・スプレッダー (IHS) で許容できる最大温度
Tjmax =Tj(ジャンクション温度)の最大で、ダイ内部の温度の限度

Tcaseはヒートスプレッダで許容できる温度、つまり、TDPで発熱する温度の限界ということになります。
 
つまり、Tcaseが60℃でTjmaxが100℃であるならば、Tjmax100℃以下にするためにはTcaseが60℃以下になってればよいということにもなります。
逆に考えるとヒートスプレッダを60℃にしていればTjmaxの温度にはならないということです。これを踏まえてTDPを元に考えていきます。

CPUダイとヒートスプレッダーの熱の伝わりにくさを熱抵抗、Θjcと呼びますがこの数値が大きいほど熱が伝わりにくいということになります。
 
TDPが90Wならば、
熱抵抗ΘjcをTDPを元に、(100-60)℃/90W=0.444℃/W程度 となり、ヒートスプレッダを冷却するにあたり、その熱の伝わりにくさは 0.444℃/w ということになります。

この数値を元にヒートスプレッダからコアまでの冷却能力の指標が汲み取れます
そこで、2700Kと4790Kを比較してみます。

2700K TDP95W Tjmax98℃ Tcase72.6℃ = Θjc=0.267℃/W
4790K TDP88W Tjmax100℃ Tcase77.04℃ = Θjc=0.295℃/W
3770K TDP77W Tjmax105℃ Tcase67.4℃ = Θjc=0.488℃/W

こうしてみると、3770Kが明らかに熱抵抗が高くTjmaxが105℃でTDPが低いにもかかわらず熱抵抗が大きいために、より冷やす必要があるということになります。

代表的なCPUのTDPと熱抵抗

CPU TDP Tcase Tjmax Θjc(熱抵抗)
Core2Extreme QX9770 136W 55.5℃ 85℃ 0.2169118℃-W
Core2Extreme QX9650 130W 64.5℃ 95℃ 0.2346154℃-W
Q9550 95W 71.4℃ 100℃ 0.3010526℃-W
i7 980X 130W 67.9℃ 101℃ 0.2546154℃-W
2700K 95W 72.6℃ 100℃ 0.2673684℃-W
3770K 77W 67.4℃ 105℃ 0.4883117℃-W
4770K 84W 72.72℃ 100℃ 0.3247619℃-W
4790K 88W 74.04℃ 100℃ 0.295℃-W
G3258 53W 72℃ 100℃ 0.5283019℃-W
5960X 140W 66.8℃ 89℃ 0.1585714℃-W

これは各CPUごとを一覧にして発売の流れに沿ったものにしました。
■Core2ExtremeはTDPが136WとCPUの中では一番高いのに関わらず、Tjmaxが85℃と低いため、熱抵抗そのものは小さくても冷やさないとだめということになります。

■Q9550は前のCPUに比べてTDPがかなり低くなり、Tjmaxは高くなったが、熱抵抗が大きくなったためその効果は大きくありません。
数値から見てソルダリングによるもの(ハンダ?)なのか単に発熱量が高いのかはわかりません

■980Xでは130Wと再び高くなりましたが、前のQX9650に比べTjmaxも高くなったため、熱抵抗は大きいですが余裕があります

■2700Kは9550並ですが、Tjmaxが9550よりも低いのに熱抵抗が小さいためより冷えます

■3770KはTjmaxが105℃と高くなり、TDPも77Wと低いのに関わらず、熱抵抗が大きすぎてTcaseが低くなっていて全然冷やせません。

この状態だけみれば、3770Kはかなり熱く冷えないということがわかります。CPUのせいというより、ソルダリングのせいだということもわかるでしょう

■これを踏まえて4770KはTDPが高くなり、Tjmaxは逆に下がったのに、熱抵抗が小さいので3770Kよりは余裕があります
 ヒートスプレッダとの接点を改良したことが伺えます。

■4790Kになってさらに熱抵抗が小さくなり、TDPはあがっても冷えるようになっています、これがソルダリング改善の所以でしょう

■しかし、G3258は53Wと低いTDPにも関わらず熱抵抗が大きすぎてあまり余裕がありません、ソルダリングの改善はRefleshすべてかと思いますがこの数値だけみると、3770Kより悪いことから、元のソルダリングにもどしたか?と考えてしまいます。

■5960Xだけみると、熱抵抗が異様に低く、Tjmaxが89℃とかなり低い上にTDPが140Wとこれまでで最大にも関わらず、9770と10℃も違いがでました。

なぜグリス仕様になったのか垣間見える

こうして考えると、発熱を抑えたCPUが開発され、研究した結果2700Kあたりでかなり改善がすすんでいくのち、開発したCPUが進んで熱さが抑えられたため3770Kでコストダウンのためにグリスにしたのでは?と考えられますね、グリスで十分だろうと。

しかしオーバークロック分が加味されていないため、熱いと言われだし、改めて4770Kあたりからハンダで行うことなくコストの為、あえてグリスの変更での改善にしだしたと。ただ今度は熱伝導が良すぎるとデフォルトでのクーラーの性能が間に合わなくなることから、あえてクロックを抑えてたり、熱伝導をさせないことでサーマルを発生させてるのか?と邪推してしまいます。

確かに熱いには熱いが最近の性能のよくなったクーラーとあわせてデフォルトで使っている分には十分かもしれませんね、ソルダリングなのに、980Xよりは余裕がありますから。

こうなってくると殻割という言葉が流行りだした3770Kは合点がいきます。ジサカーは視点が鋭いですね。
4790Kあたりは過度なOCをしない限りはそのままでも使えそうな状態になっています。これはintelの説明と合いますね。
そして殻割すべきはG3258ではないでしょうか。 仮にこれが熱抵抗0.3あたりだとすると、87.9℃ですから実に温度差で12.1℃の余裕が生まれます

殻割で効果が一番高いのは

殻割という言葉が再び流行りだした3770Kは合点がいきます。ジサカーは視点が鋭いですね。熱いという指摘も適切であったと思います。

そして、4790Kあたりは過度なOCをしない限りはそのままでも使えそうな状態になっています。これはintelの説明と合いますね。

もっとも効果が高い、殻割すべきはG3258ではないでしょうか。 仮にこれが熱抵抗0.3あたりだとすると、87.9℃ですから実に温度差で12.1℃の余裕が生まれます。しかし2コアであることと、この温度域にさせるためにはVcoreも半端なく盛るという結果になってしまいますが。